20代最後の夜は、あなたと
「えっと、M社ですが」


「奇遇だな、俺も午後そこへ行くんだ。


ジャマすんなよ」


捨て台詞を残し、会議室へ入っていった。


ジャマするって、子どもじゃあるまいし。


リサーチも仕事の一環だから、いかにも『半休ふたりで合わせて取って、すいている平日にショールームへ来た新婚さん』みたいな感じで、伊勢くんと私はお昼過ぎに会社を出た。


ショールームの入口で、伊勢くんはいきなり私と手をつないだ。


「ちょっと、何もここまでしなくても」


「案内されるまでだ、我慢しろ」


ちぇーっ、今までは『夫が忙しくて一人でショールームに来た奥様』気取りでショールーム巡りしてたのにな。


「いらっしゃいませ」


にこやかな受付嬢に迎えられた。


奈緒の方が100倍かわいい。


簡単なアンケートに伊勢くんが記入し、キッチンコーナーへ向かった。


< 16 / 197 >

この作品をシェア

pagetop