20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんちに前のりして、楽しみで仕方ないはずなのに。


私は、霧島課長のことばっかり考えてた。


短い滞在期間だから、どこに行くかいろいろ考えようって言われても。


伊勢くんの提案に、


「それいいね」


「それ食べたい」


とか答えるだけだった。


なんで課長は、わざわざ待ちぶせして会いに来てくれたの?


どうして、忘れられないキスしたの?


「だいたい決まったし、明日は早いから寝よっか」


「うん」


「でも、その前に」


伊勢くんは、いきなり私をお姫さま抱っこした。


「紗和を抱いてからな」


課長のキスとは違う、伊勢くんのキス。


どんどん深くなっていき、伊勢くんの熱い体温を感じる。


私は、霧島課長のことを必死で打ち消した。


でも、打ち消そうとすればするほど、課長に抱かれた感触を思い出した。


目の前にいるのは、伊勢くんなのに。


私、なにやってんだろう。


自分がキライになりそうだった。


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