20代最後の夜は、あなたと
お客さんをおろしたタクシーが目の前で停まっていたから、


「すみません、体調悪い人がいるんでお願いします!」


と声をかけ、課長をタクシーに乗せた。


課長のマンションのだいたいの位置を伝え、これからどうするか考えた。


「課長、カギ出しますね」


聞こえてるかどうかわかんないけど、声をかけてからカバンの中を探した。


マンションに着くと、運転手さんも手を貸してくれて、なんとか部屋までたどり着けた。


課長は何かうわごとのように話していたけど、眠っているわけではなく、つらくて力が入らないみたいだった。


課長をベッドへ運び、とりあえずネクタイを外して首筋を冷やし、体温計を探して測ったら、38.7度もあった。


「課長、解熱剤飲まないとですよ」


コップに水を入れ、課長を無理やり起こして解熱剤を飲ませた。


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