20代最後の夜は、あなたと
「このガス台、使いやすそう」


「俺はIHの方がいいけどな」


二人で当たり障りのないことを言いながら、細かいチェックを繰り返す。


受付嬢もフロアスタッフも、心得ているのか近づいてこない。


このパントリー、うちよりデザインいいかも。


吊り戸棚のハンドル、軽くて使いやすい。


頭の中に記憶させながら、伊勢くんと適度な距離を保ちつつ歩いていた。


その時、視界に知り合いの姿が見えた。


奈緒だ。


制服から私服に着替えてて、ミニスカートで美脚を披露してる。


奈緒はコンペに参加しないから、誰かの付き添い?


奈緒が笑いかけている視線の先をたどったら、霧島課長がいた。


霧島課長はいつもと同じ無表情だけど、奈緒は自然に腕を組んだ。


美男美女って、こういう人たちのことをいうんだな。


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