20代最後の夜は、あなたと
「違うよ、課長が・・・」


『何が違うんだよ!


俺は、課長と一緒にいるかどうか聞いてんだよ!』


伊勢くんが怒鳴るのを、初めて聞いた。


「・・・いま、課長の部屋にいる」


『話になんねーな』


「伊勢くん、誤解だから!


課長、高熱出して倒れて、部屋まで送っただけだから!」


私は、必死に訴えた。


だけど、伊勢くんには届かなかった。


『紗和一人でどうやって課長を部屋まで連れて行ったっていうんだよ!』


「それは・・・」


うまく言葉にできない。


『仮に紗和の言うことが正しいとしても、なんで俺に連絡してこねーんだよ?


俺との約束は思い出さなかったってことか?』


「・・・ごめん、思い出さなかった」


言わなきゃいいのに、正直にしゃべってしまった。


『もういいよ』


「じゃあ、伊勢くんは、目の前で誰かが倒れても、無視しろって言うの?


しかも他人じゃなくて、上司なのに?」


追い討ちをかける、バカな私。


『いいよもう、勝手にしろ!』


電話は切れて、つながらなくなった。



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