20代最後の夜は、あなたと
「それだけ毒舌を吐けるなら、もう平気ですね」


「あ、なんか、頭が痛ぇ」


「嘘ばっかり」


「本当だって、ほらな」


課長は私を引き寄せると、おでこをくっつけた。


「な、めっちゃ熱いだろ」


「た、確かに・・・」


胸がキューンって音をたてたかと思うほど、苦しくなった。


「紗和も顔赤いけど?」


「そんなこと、ないし」


「紗和、看病してくれてありがとう」


「え?」


課長が素直にお礼を言うなんて、驚いた。


「紗和、今夜だけでいいから」


課長はそのまま私を抱きしめ、私も自然と、課長の背中に両手をまわした。


ダメだって、頭ではわかってるつもりだったのに。


今はただ、課長のそばにいたかった。


「紗和、クローゼットから着替え取ってくれる?」


「は、はい」


もしかしたらキスされるかも、って想像してた。


ううん、想像じゃなく、期待してた。


「はい、どうぞ。


私は向こうに行ってますので」


「なんだよ今さら、お互いの裸はすみずみまで知ってるじゃん」


「な、なんでそういう変なこと言うんですか!」


「ま、いいけど」


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