20代最後の夜は、あなたと
「そっか、仙台のご両親によろしくな」


「はい」


課長が泊まったなんて、両親に話す日はこないと思うけど。


ヤバい、課長と泊まった日のこと、思い出した。


「そろそろ、失礼します」


椅子から立ち上がった私を通せんぼするみたいに、課長は目の前に立った。


「課長?」


「俺にとって、年内最後のチャンスだから言うけど」


そのまま、引き寄せるように私を抱きしめた。


「紗和、好きだ」


静かな部屋に、課長とふたりきり。


私の耳には、少し速い課長の胸の音。


「伊勢から、転職のことは聞いてる。


それにたぶん、プロポーズされてることも、想像がつく。


だけど、俺は相手が誰だって、紗和を奪ってみせる」


課長、私は、苦しくて倒れそうです。


伊勢くん、ごめん。


そんな気持ちが、頭の中でグルグルまわっていた。


「失礼します」


課長の胸を軽く押し、荷物を持って部屋を出た。


冬なのに朝日がまぶしくて、私には痛かった。


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