20代最後の夜は、あなたと
新幹線が東京へ近づくにつれ、どんどん緊張してきた。


どんな顔して伊勢くんと会ったらいいんだろう。


まずは、会いたかった、とか素直に言った方がいい?


それとも普通に、明けましておめでとう?


・・・いやいや、それはないか。


伊勢くんと、何日ぶりに会うんだろう。


確か、年末最後の出勤日の朝、出先へ向かう伊勢くんに、行ってらっしゃい、って声をかけた以来だ。


けっこう長いケンカだったな、とスマホのカレンダーを見てたら、霧島課長から電話がかかってきた。


デッキへ移動しつつ、電話に出た。


「もしもし」


『紗和、明けましておめでとう。


年末はありがとうな』


「おめでとうございます、今年もよろしくお願いします」


『紗和、今どこ?』


「新幹線で東京へ向かってるところです」


『そっか、時間が合えば迎えに行けたんだけどな』


「いえいえ、そんな」


『じゃあまた、会社で』


もう少し、課長と話したかった。


「あっ、課長、もう体調はいいんですか?」


『ああ、バッチリ。


紗和のおかげ』


「たいしたことしてませんが、良かったです」


『そんなこと言っていいのか?


俺のせいで伊勢ともめたんだろ』


「いえ、平気です」


『ふーん、もう元通りか』


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