20代最後の夜は、あなたと
帰る方向は違うけど、まだつきあってるフリをしてるから、伊勢くんと二人で帰った。


「二次会、行かなくていいの?」


「紗和と二人で帰らせてくれって頼んだ」


「なにそれ、変な冗談」


「本気だぞ。


そんなに酔っぱらってる紗和を、一人で帰せないだろ。


一応俺は、紳士なんだし」


「一人で平気なのに」


「ヤケ酒飲んでる紗和を、心配してんだよ」


「ヤケ酒なんかじゃないし」


「じゃあ、俺と別れてさみしいから飲んでたのか?


違うだろ。


課長が女子に囲まれてんの見て、妬いてたんだろ」


「な、なに言ってんの、そんなわけないじゃん」


「へー、課長と目が合ってあわててそらしたのって、紗和じゃねーの?」


見られてたのか。


「相変わらず、伊勢くんは鋭いね」


「ちげーよ、俺が紗和を・・・」


「私を、なに?」


「やっぱ、もったいないから言わねー」


「なにそれ、気になるじゃん」


「ま、そのうちわかるよ」


「有休中は札幌へ行くの?」


「ああ、いろいろやることもあるしな」


「気をつけてね」


なんだかんだいって、私を家まで送ってくれた。


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