20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんが出社する最後の日は、雪がチラチラ舞っている寒い日だった。


お菓子を配りながらみんなに挨拶してる伊勢くんを見て、もう会えないかと思うとさみしかった。


しかたない、フラれたんだし。


伊勢くんは最後に私の席へ来て、


「宮本には、これな」


と言って、私が好きなキャラクターのマグカップをくれた。


「ありがとう、大切に使うね」


「仕事、がんばれよ」


伊勢くんは定時であがり、みんなで見送った。


伊勢くんが帰ると、


「宮本、さみしくなるな」


「宮本さんは札幌へ行くと思った」


みんなからいろいろ言われたけど、笑ってやり過ごした。


伊勢くん、さよなら。


大事にしてくれて、ありがとう。


私にとって札幌は、特別な場所になったよ。


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