20代最後の夜は、あなたと
伊勢くん、敏感すぎるけど、やっぱりいい人だな。


伊勢くんの言う通り、課長に本当の気持ちを伝えてみようかな。


明日は30歳の誕生日だし。


当たって砕けるなら、29歳最後の夜がいい。


すぐ、課長に電話した。


『もしもし』


まるで電話を待っていたみたいに、ワンコールで出てくれた。


「課長、明日の夜ってあいてますか?」


『あいてるけど』


明日は土曜日だから、予定が入ってるかもしれないって思ってたけど、よかった。


「お話ししたいことがあるので、どこかで会えませんか?」


『じゃあ、俺んち来いよ。


お泊まりセット忘れんなよ』


「えっ?」


『伊勢から聞いてる。


紗和がもうすぐ会いたいって言ってくるだろうから、受け入れてほしいってさ。


俺としてはだいぶ待ったし、もう耐えられねーよ。


今すぐ、迎えに行くから』


「は、はい」


あまりの急展開に、頭が混乱してる。


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