20代最後の夜は、あなたと
しばらくすると電話が鳴って、課長の車がマンション下に着いたっていう連絡だった。


エントランスを出ると、課長が車のそばで立っていた。


「なんか、二人っきりで会うの久しぶりだな」


「そうですね」


「で、話ってなんだよ?」


「あ、えっと、私は、やっぱり課長のそばにいたいです。


気づくと目で追っちゃって、なんか自分でもよくわからないんですけど、」


「端的に言えよ」


深呼吸して、課長の目を見て、こたえた。


「課長が、好きです」


課長は、私の好きな笑顔をみせて、


「俺は、それ以上に紗和が好きだ」


グッと引き寄せられ、課長の腕に包まれた。


「もう、俺を待たせんなよ」


「うん」


「今夜は寝かせねーぞ」


「ええっ?」


「明日は誕生日だろ、したいこと考えとけよ」


「課長と一緒なら、」


「いつまで課長って呼ぶ気だ?」


「え?」


「下の名前で呼べ、課長命令だ」


「・・・れ、い」


29歳最後のキスは、甘くて優しくて、とろけそうだった。



○o。fin. 。o○
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