20代最後の夜は、あなたと
コンペの前日
伊勢くんとショールームへ行った次の日、奈緒を見かけて手を振ったら、顔色が悪かった。


暇をみつけて受付に行くと、奥の医務室で休んでいるという。


コンコン、とノックしてから、


「奈緒、大丈夫?」


声をかけたら、奈緒はベッドに座ったまま男に抱きついてた。


「あっ、ごめんっ!」


私が叫ぶのと、男が振り向いたのが同時で。


霧島課長が、顔色ひとつ変えずに私を見ていた。


ドアを閉め、急いでデスクに戻った。


奈緒、大丈夫かな。


霧島課長と何かあったんだろうけど。


デスクに座ってボーッとしていたら、霧島課長が何食わぬ顔で戻ってきた。


私の右隣に座り、トイレから戻ってきたみたいに自然な感じでパソコンのキーをたたいてる。


なんなの、その態度。


奈緒を傷つけたりしたら、許さないんだから。


< 21 / 197 >

この作品をシェア

pagetop