20代最後の夜は、あなたと
そう言うと、霧島課長は私のパソコンをのぞきこんだ。


「ふーん、これ宮本が全部描いたのか」


「そうですが、なにか?」


「いいじゃん、これ。


俺好きだな、このデザイン」


そして、本当に嬉しそうな顔で、笑った。


その笑顔は、普段の毒舌を帳消しにするほど優しいもので。


不覚にも、心臓が一瞬、跳ねるように鼓動したんだ。


「ありがとう、ございます」


「早く仕上げろよ、もうすぐ20時だぞ」


「は、はい、すみません」


その時、スマホがパッと明るくなった。


奈緒からのメッセージが表示されていた。


『霧島課長、まだいるかな?』


『いるよ、何か伝える?』


私は、奈緒から話してくれるのを待つつもりだったから、何気ない返事をした。


既読にはなったけど返事はなく、どうしたんだろう?って思っていたら。


エレベーターホールからフロアに続くドアが開き、奈緒が立っていた。


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