20代最後の夜は、あなたと
「ヤバイヤバイ、上の空で返事してたよ」


伊勢くんのことを取っつきにくくて苦手だと思っているのが無意識に出ちゃってるのか、伊勢くんは私に必要以上のことを話してこない。


花粉予防のマスクをして、エントランスの自動ドアを通った時だった。


突然目の前に人影があらわれ、よけることもできずにぶつかってしまった。


「す、すみませんっ」


明らかに相手が悪いんだから、こういう時は、


「ちょっと、どこ見て歩いてんのよ!」


なんて、きっぱり言い切れればスッキリするんだろうけど。


ぶつかってきた背の高い男は私を見下ろしながら、


「悪いな、あんまりにもちっこくて見えなかった」


なんて、ほざくではないか。


さすがにカチンときた私は、


「お言葉ですけど、私は157cmありますし、おっしゃるほど小さくはないと思いますけど」


って、言い返した。


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