20代最後の夜は、あなたと
母の携帯にかけたら、父と二人で法事に行っていて、今夜は戻らないらしい。


『そういうことなら、部屋はあるし自由に使っていいわよ。


あ、ごめん、ちょっと移動しなきゃ、じゃあね』


ツーツー、とさみしい音を残して電話が切れた。


「霧島課長、両親が住んでるマンションが、わりと近くなんです。


課長さえよろしければ、今夜は泊まりませんか」


考えるより先に、勝手にしゃべってしまっていた。


昨日までは、課長と出張なんて最悪、って思っていたけど。


今日話しているうちに、だいぶ印象が変わった。


それに、お互い困ってるんだし、とりあえず雨風しのげてお風呂に入れるなら、その方がいいんじゃないかと思ってしまったんだ。


母に、課長がいることは言えずじまいだったけど。


「宮本がいいなら、お邪魔するかな」


駅で食べ物やビールを買い、タクシーに乗った。


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