20代最後の夜は、あなたと
「き、霧島課長?」


「悪い」


課長は、抱きしめていた腕をほどき、私の両肩を大きな手で優しくつかんで、立たせてくれた。


部屋は涼しいのに、私の頬は自分でもわかるほど熱くなっていた。


「す、すみません。


とりあえず、タオルをお渡ししておきます。


いま、お風呂の準備しますね」


バタバタ慌てる私を、課長がニヤニヤしながらながめていたのに、私は全く気づいてなかった。


弟の部屋から着替えを探しだし、


「これでもよければ、使ってください。


バスタオルと一緒に置いておきますので、先にお風呂どうぞ」


「ありがとう」


霧島課長から『ありがとう』なんて言われると思ってなかったから、二度見してしまった。


「なんだよ?」


「な、なんでもないです」


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