20代最後の夜は、あなたと
翌日の土曜日。


『マンションの一室で、霧島課長と二人きりなんだ』と意識したら、緊張して眠れなくなってしまった私は、かなりの寝不足のまま起きた。


リビングに出たら、コーヒーのいい香りがした。


「おう、おはよう」


「えっ、あっ、お、おはようございます」


「なんだ、まだ寝足りないって顔だな。


二度寝してもいいぞ」


「いえ、そういうわけには」


この状況で、二度寝なんてできるわけないじゃないか。


「もう新幹線、動いてるみたいだぞ。


雨もやんだし、観光して帰るか?」


課長、なに言い出すんだ。


「いえ、課長も慣れない場所でお休みになってお疲れでしょうから、早く東京へお戻りになった方が・・・」


「俺、牛タン食いたい」


・・・子どもか。


「わかりました、お昼に牛タン食べてから帰りましょう」


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