20代最後の夜は、あなたと
「なんだよ、俺と一晩過ごすことになって眠れなくて、寝不足なんじゃねーの」


「な、なんですかそれ、そんなことあるわけないじゃないですか!」


「ムキになるなよ、その通りですって言ってるようなもんだぞ」


「違うったら違います!」


「そうか、おまえの顔に書いてあるけどな」


「ええっ?」


思わず顔を隠すと、


「ほら、もう着くぞ」


霧島課長は、ニヤニヤ笑っていた。


なんなの、寝起きに変な攻撃しないでほしい。


東京駅からは、課長とは別々の電車に乗る。


新幹線の改札を出たところで、挨拶して帰ろうと思った。


「お疲れさまでした、ではまた月曜日に」


「昨日は泊めてもらって、ありがとな」


「いえ、どういたしまして」


「今度、埋め合わせするから」


じゃあな、と手を挙げると、霧島課長は背中を向けて歩いて行った。


『今度』って、いつ?


『埋め合わせ』って、なに?


気になる言葉の断片に、ドキドキしている私がいた。


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