20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんは静かに寝息をたてていた。


課長はさりげなく、グラスにウーロン茶を入れて持ってきてくれた。


「まあ、テキトーに座って」


言われるまま、ソファーに座った。


「伊勢はいつもあんな風につぶれんのか?」


「いえ、いつもはしっかりしてます」


「ふーん、よっぽど今日の状況がキツかったってことか」


霧島課長は意味不明なことをつぶやいていた。


「あっ、そろそろ終電なくなるので、失礼します」


腰を浮かしかけると、


「宮本って、家どこ?」


突然質問され、中途半端な体勢のまま、最寄り駅を答えた。


「わりと近くじゃん、タクシー代出すから、ここで飲み直せば?


なんなら、泊まっていけば」


と、ますます訳のわからないことを言う。


変なことを言うから、思わず座りなおしてしまった。


「いえいえ、帰れますから」


一刻も早く、家のベッドにダイブしたいんだから。


ところが、課長は私を混乱させるようなことを話し出したんだ。


< 66 / 197 >

この作品をシェア

pagetop