20代最後の夜は、あなたと
「霧島課長に、課の業務内容をご説明しておいて」


「・・・は、はい」


恐る恐る霧島課長の顔を見上げると、私を一瞬だけ確認して、目をそらした。


良かった、たぶん私のことなんて覚えてない。


あの時はマスクしてたし、平気平気。


朝礼が終わり、それぞれが自分のデスクに戻っていく。


よりによって、前課長の席は私の隣で、必然的に霧島課長も隣に座った。


そっか、席が近いから部長は私を指名したのか。


一人で納得していたら、


「おい宮本、聞いてるのか」


霧島課長が、私のデスクに右手をついて顔をのぞきこんできた。


「えっ、えっと、その・・・何でしょうか」


ヤバイ、なーんにも耳に入ってきてなかった。


「おまえの耳は何のためについてるんだ、聞こえづらいなら耳鼻科へ行け」


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