20代最後の夜は、あなたと
「伊勢、いつから起きてた?」


「え、『彼氏いんの?』くらいからです」


「なんだよ、けっこうガッチリ聞いてんじゃねーか」


「すみません」


「まあ俺も、伊勢が聞いてるかもっていう前提で話してたからな」


「そうですか」


「宮本のこと、いつから好きなんだ?」


「入社式からです」


「なんだよそれ、俺の方が長いって言いたいのか」


「そうです」


「伊勢がノンビリ構えてる隙に、俺のにしようと思ってたけど、伊勢も本気なんだな」


「僕は本気です」


「ま、お互いの腹ん中わかったんだし、飲みなおすか」



私が帰ったあと、そんな会話が交わされていたことを知るのは、ずいぶん先のことで。


私はタクシーに乗って自宅に着いてからも、あまりにも驚くことばかりで、ボーッとしていた。


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