20代最後の夜は、あなたと
伊勢くんは元野球部ってこともあって、たまに観に行くらしい。


「宮本は、野球のルールとか知ってんの?」


「うん、お父さんが野球中継をテレビでよく観てたから、基本的なことは」


「昔さ、大学のサークルみんなで観に行ったら、打ったら3塁へ走ると思ってたっていう子がいたから」


「伊勢くんのことだから、優しく教えてあげたんでしょ。


残念でしたー、私はそういう女らしさないから」


「バカだな、おまえみたいに知ってる子の方がいいに決まってんだろ」


「またまたー、野球のことわかりません、なんて子は見た目もかわいいんだから」


「おまえがいいって、マジで」


一瞬、伊勢くんの真面目な顔に驚いた。


まるで、告白してるみたいな言い方だったから。


「じゃ、当日は飲みながら観戦しよ。


晴れるといいね」


伊勢くんの視線を外し、胸のドキドキを必死でごまかした。


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