20代最後の夜は、あなたと
「いいのか?」


「もちろん、送ってくれたお礼」


「じゃあ、タオル借りて帰るよ」


3階の私の部屋に入ると、伊勢くんは玄関で突っ立ったままだった。


「狭いけど、あがって待ってて」


タオルタオル、と言いながら、スポーツタオルを持ってこようと私が奥に行った時、テーブルの上に置いたスマホが鳴った。


「スマホ鳴ってる、出れば」


伊勢くんが冷静に言い、私がタオルを渡してから画面を見ると、霧島課長からの着信だった。


「もしもし?」


『あ、俺だけど。


明日、朝9時におまえんちへ車で迎えに行くから、いま口頭で住所教えろ』


「えっ、い、今ですか?」


『なんだよ、何か都合悪いのか?


俺いま車に乗ってるから、カーナビに登録したいんだよ』


「は、はい、わかりました」


住所を告げると、


『じゃ、明日な』


ツーツー、と電話が切れた音が、静かな部屋に響いた。


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