20代最後の夜は、あなたと
「お、おはようございます」


「おはよ」


課長は、私の服装を上から下まで見ると、


「ま、いっか。


早く乗れ」


褒めもしないし、けなしもしないのか。


「よろしくお願いします」


バタンとドアが閉まると、当たり前だけど、二人っきりの密室になった。


「宮本、車酔いは平気か?」


「はい」


「じゃ、高速乗るから、しばらくトイレとか無理だぞ。


緊急の場合は、すぐに言え」


「わかりました。


ところで、どちらへ行くんですか?」


「それを言ったら、つまんねーだろ」


課長はウィンカーを点滅させ、なめらかに発進した。


洋楽をBGMにしながら、意外と話題は尽きなかった。


もっと沈黙が続くんじゃないかと思ったけど、課長は意外と聞き上手で、しかも話題を変えるのも上手かった。


まるで、的確なパスを出すサッカー選手みたいだった。


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