20代最後の夜は、あなたと
私の顔を見た課長は、満足そうに笑った。


「だろ?」


課長って、本当に嬉しそうに笑うんだよね。


こっちまで幸せな気持ちになる。


「ま、遠出するかいがあるだろ」


「課長は、このおそばを食べるためだけに来ることもあるんですか?」


「あるよ」


「確かに、また食べに来たくなる味です」


「俺が、また連れてきてやるよ」


「そうやって、たくさんの女性を口説いてきたんですね」


「あのな、俺を何だと思ってんだよ。


好きな子を連れてきたの、初めてだっつーの」


課長は、私のおでこを指先で軽くたたいた。


あれ・・・なにこの感じ。


課長の指先がふれた場所が、ジンジンするくらい熱い。


たぶん赤くなってる顔を隠すようにうつむいたまま、何も言い返せずにいる私に、


「悪い、痛かったか?」


課長は、柄にもなく優しく声をかけてくれた。


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