20代最後の夜は、あなたと
霧島課長は、私の前に座ってる伊勢くんに何事か聞いている。


いいやもう、座っちゃえ。


立ち上がって抗議した私が、バカみたいじゃん。


自分の仕事を始めたとたん、霧島課長はまた話しかけてきた。


「宮本、このカタログは最新版か?」


しぶしぶ自分の手を止めて、


「違います、最新版はあちらの棚にあります」


と答えたら、


「なんで最新版がデスクにないんだ?」


また、あの鋭い目で私をにらんだ。


そんなの知らないよ、あんたのデスクは前課長が使ってたまんまだし、部長がうっかり間違えたんじゃないの?


そう言いたいのを我慢し、


「申し訳ありませんでした、すぐにお取りかえします」


視線を合わせず、霧島課長が手に持っていた古いカタログを奪い取り、最新版をデスクに置いた。



これが、霧島課長と私の、最低最悪の出会いだった。


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