20代最後の夜は、あなたと
「すみません、変なこと言って」


「いいって、俺がおまえのイメージとは違うってわかってくれればいいんだから」


ヤバイ。


胸までドキドキして、熱くなってきた。


これって、もしかして、もしかしなくても。


私は、霧島課長を好きになってるってこと?


「出るぞ」


課長の背中を追いかけながら、自分の気持ちにとまどっていた。


車に乗りこみ、東京へ向かうのかと思ったら、さらに山奥へ走り出した。


「あの、これって東京方面じゃないですよね?」


「ああ」


「また、秘密の場所ですか?」


「そう」


そっと、課長の横顔を盗み見た。


細い山道を走っているからか、真剣なまなざしは端正な顔をより引き締まらせていて、ハンドルを握る手は骨ばっていて意外なほど男っぽい。


「なんだよ?」


「いえ、別に」


みとれてました、なんて言えるわけないし。


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