35階から落ちてきた恋
「それはあの時藤川先生がキチンと木下先生に彼女さんの情報を出さなかったからですよ。こんなにラブラブの彼女さんがいるのならしっかり自慢すればよかったのに」

ほんの少しだけ嫌味を込めてみるとなぜか藤川先生はバツの悪そうな表情になり、ちらっと彼女さんの顔を見た。
「あー、あの時はちょっと夏葉とすれ違っててね。何となく素直に言いにくかったというか」

チラッと隣を見ると彼女の方も困ったような顔で笑っている。

そこでピンときた。ああ、あの時は痴話げんか中だったってことか。

「けんかするほど仲がいいって言いますもんね」

「全面的に俺が悪かったから謝り倒したよ」
あははっと笑って彼女の後頭部のあたりの髪をそっと梳くように撫ではじめる。

ええっと。

「先生、ちょっとイメージが壊れそうです。すごい溺愛」

「尚也ったらくっつきすぎ」顔を真っ赤にして慌てて距離をとろうとする夏葉さんはクールだと思ったけど、ずいぶんと可愛らしいみたい。

「好きな女を前にしたらこんなもんだよ」
逃げ出そうとする夏葉さんを余裕で自分の胸に引き戻して髪にキスをする。

ひゃー。
甘い、甘すぎるぞ。チョコフォンデュかよ、藤川尚也。


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