35階から落ちてきた恋
はっと気が付くと木田川さんと青山君がこちらを見ていた。
つい、いつものようにやってしまった。恥ずかしい。

「仲がいいのは知ってますけど、そういうのは二人きりになってからにして下さいね。僕は先に木下に連絡してきますから」
木田川さんはそう言ってスマホ片手に廊下に出て行ってしまった。

残された青山君はかなり居心地が悪そうで申し訳ない。

「私もお茶を淹れなおしてきます」
カップをもってそそくさとキッチンに逃げ込んだ。

今度ははちみつもすりおろしりんごも入れないシンプルなアップルティーを淹れる支度をしていると、木田川さんがキッチンに顔を出した。

「水沢さん、木下がクリニックのことは気にしなくていいと言ってます。水沢さんが来にくいようなら明日はお休みしてもいいそうですがどうしますか?」

「私はクリニックにご迷惑でなければ出勤したいんですけど」
私がそう言うと木田川さんは頷いて電話の向こうの木下先生に話し始めた。

「木下、水沢さんは出勤したいそうだ。朝は事務所のスタッフが送るから。・・・ああ、わかった。伝えるよ。・・・うん、それもわかってるよ。準備しておくから任せておけ。じゃあな」

電話を切ると、
「木下が気を付けてくるように言ってましたよ。それと、明日は美知子さんも待ち構えてるから覚悟してくるようにだそうです」
と教えてくれる。


< 130 / 198 >

この作品をシェア

pagetop