35階から落ちてきた恋
驚いた。美乃梨さん、わざとだったんだ。
口調もいつものように戻っている。
「ありがとうございます。私も急にこんなことになってどうしたらいいのかって頭が回らないんです。わかっているようで何もわかっていなかったんだって気が付いて」

「まあ、私じゃなくても、業界のきれいどころも引き続きタカトのことは狙って来るでしょうから負けないで頑張ってくださいね」

業界のきれいどころ・・・
そりゃ、そうか。

「勝てる気はしないけど、私は私だから頑張る」
弱くなりそうな自分を叱咤するように頬を両手でパンっと張って笑顔を作った。

それで、それまで美乃梨さんと私の会話を見守っていた美知子さんたちが次々と口を開いた。

「さあ、いろいろ話してもらうわよー」
「これまでずーっと我慢してたんですからね～。記者たちには話しませんから」
「プライベートのタカトって激甘？ツンデレ？どんな感じなんですか？」
「一緒にいて生ギターとかアリですか？」

昼休み中続いた嵐のような質問攻撃に、美味しくて大好きな鈴庵の天ぷらを今日も味わうことができなかった。

私の大好きなナスの天ぷら・・・しっかり味わいたかったな。
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