35階から落ちてきた恋
「まだまだあるぞ」

「うわっ」
それはラグにごろごろと転がる二人で空けたワインボトルの空き瓶。
酔った私が清美さんに抱き付いているところ。
清美さんの膝枕で眠る私。

「社長のヤツ面白がって自撮りしておいて翌日九州にいる俺に送り付けて楽しんでたんだ」

「・・・消してください・・・」

「果菜サンもずいぶんとお楽しみだったみたいだし?」
ニヤニヤと意地悪な顔をして私を見下ろす。

「あー、ええ。その、お高いワインは初めて飲んだし。おつまみも美味しくてですね、えーっと」

「俺を追い出しておいて?」

「ううっ。その・・・ごめんなさい」
私はテーブルにおでこが付きそうなほど頭を下げる。
あの日、確かに進藤さんを避けた挙句に調子に乗って飲みすぎた。

ははっと私の頭の上で笑う声に顔を上げると進藤さんは楽しそうに笑っている。

「怒ってないよ。だから謝らなくていい」
私の頭をクシャっと撫でて私の頬に手を伸ばす。

それからゆっくり頬から首すじに手を這わす。

「お前の葛藤に気が付いてやれなくて悪かったな」

私の目を真っ直ぐに見ながらはっきりとそう言った。
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