35階から落ちてきた恋
「俺さ、あの時お前が落ちてきた俺を受け止めてくれるんじゃないかって勘違いしそうになった。果菜は俺の事を見ていたわけじゃないのにな。
でも、あの時、お前なら俺の全部を受け入れてくれるんじゃないかって感じたんだ。そう直感で。今は俺も受け止めたい。果菜の全てを」
進藤さんは私の頬に両手を当てる。ダークブラウンの瞳が私の視線とぶつかる。
「果菜、結婚するぞ」
はっきりと、そしてしっかりと私に告げた。
結婚しようでも結婚してくれでもなく『結婚するぞ』
それは決定事項なんですね。
進藤さんらしくて思わず笑ってしまう。
「はい」
力強く返事をする。
彼の背中に回した自分の腕に力を入れ「大切にします。だから私のことをずっと好きでいてくださいね、貴斗さん」と彼の胸に顔をうずめると、
「お前のことを好きでなくなる日は来ない。大切にする。後悔させないから離れようと思うなよ」
と即答され嬉しくて涙がにじんでくる。
でも、頭をいつものようにポンっとされ「そろそろ限界かな」と囁かれた。
限界?
限界って何が?と聞こうと顔を上げようとすると「走るぞ」と私の右手を引っ張っていきなり進藤さんが走り出した。
ええっ!
足をもつれさせながら必死でついていく。
そして気が付いた。
ここ外だ。