35階から落ちてきた恋
進藤さんのことしか目に入らなくて、人目を気にせずくっついてしまったことに気が付いた。

商業ビルのエントランスでラブシーンをしていたのがタカトだってわかってしまっただろうか。
周りには通りがかりのカップルらしき人たちが何組かいてこちらをちらちらと見ていた。

手を引かれて走りながら「もう!こんなとこで!進藤さんのばか、ばかっ!」と悪態をついたけど、進藤さんは笑うばかり。

「俺だなんてバレてないよ。たとえバレてもきっと撮影かなんかだと思われたから大丈夫だ」

そんなはずないって。

少し走った先でつかまえたタクシーに乗り込んでも私が頬を膨らませていると
「そんなに怒るなよ。お前、好きな男との結婚が決まったんだろ」
と他人事のような言い方をされた。

何で他人事?
そんな言い方ひどい。私だけが好きみたいだ。
ジロリと睨むとフッと笑われる。

何で笑うのよ!と本気でムッとすると
「怒るなって。でも、怒った顔も可愛いと思われるなんてお前、相当愛されてるな」
と信じられない言葉が降ってきた。


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