35階から落ちてきた恋
木田川さんにもう一つの寝室に寝てもらい、私は進藤さんの寝ているベッドの横のソファに座る。

2回目の点滴をした後に少しうなされたりしたけれど、今はもう落ち着いてきていた。

リハーサルは昼からあるけれど、進藤さんは夕方からのライブに間に合えばいいと聞いている。
昼までは寝かせてあげたい。

進藤さんの規則的な呼吸音に私もホッとひと息ついた。




コンコンと何か硬いものを叩く音がする。

ん?身体があったかい。ホカホカしてとても気持ちいい。

またコンコンと音がする。ああ、これノックの音か。

ん?ノック?
って、あ、あれ?ここどこだっけ?

「水沢さーん、入りますよぉーってうわっ、何ですか、これどういう状況ですか?!」

木田川さんの大声に私はパチリと目を開けた。

やばい、眠ってしまった!飛び起きようとしたけれど起きることができない。
私の身体は温かくて大きなものにしっかりとホールドされていたからだ。

ひひえぇ~。

な、何これ、何どんな状況なの。声にならない悲鳴をあげる。

ここ進藤さんの寝ているベッド。
なぜに私は一緒に寝ているの?

「んー、木田川さんうるさい。それと、果菜もうるさい」

温かくて大きなものは私の身体をさらにぎゅっと引き寄せて私の肩口に自分の頭を摺り寄せた。

はぁああああ~????

「ちょ、ちょっとちょっとこれ一体どういうこと。説明して、タカト、水沢さん!」

「いやいやいやいや、私にもわかりませんっ」

私はへばりつく進藤さんの身体をぐいぐいと押して脱出を図る。

「果菜、暴れんな。もう少しおとなしくしてろ」

「いやー、ムリですからー」何これー。

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