35階から落ちてきた恋
やっとのことで進藤さんの腕から抜け出してベッドの下のフカフカカーペットに座り込んで息を整える。

「なんだよ、もう少し寝たかったのに。木田川さんがうるさいから起きちまったじゃないか」

進藤さんが上体を起こし首の後ろをポリポリと掻きながらしかめっ面をした。

「タカト、何で水沢さんと一緒にベッドで寝てたのかって聞いているんだよ」

「はあ?何でって、明け方トイレに起きたら果菜がソファで折れ曲がるようにして苦しそうに寝てたからベッドに運んで一緒に寝たんだけど。何か問題ある?」

問題あるでしょー!!
私はパクパクと口を開けた。驚きで声が出ない。

「そもそも二人は知り合いだったてこと?それとも?」

木田川さんは進藤さんの顔を見た後、私の方を向いた。
私に疑惑の目を向けて。

「知り合いじゃありませんからっ」
私は慌ててぶるぶると首を横に振る。

「知り合いだろーが」
進藤さんはそんな私に向かってさらに爆弾を投下する。

「知り合いじゃないですよねっ。何でそんなこと言うんですか」
もはや涙目になる。

「あの、タカトは水沢さんを名前で呼んでますけど、水沢さんの名前は果菜さんで間違いありませんか?」

「ええ、果菜ですけど・・・そういえば、進藤さん、何で私の下の名前を知ってるんですか」

木田川さんの問いに私は進藤さんを見つめた。

進藤さんが肩を震わせて笑い出す。

「果菜、もう忘れてんのかよ。先週アツシの店で会っただろ」

あ、進藤さんもあの時の私のこと覚えていたんだ。
でも、会ったって言っても見かけただけ。

「会ったってだけで話もしてないじゃないですか。それで、どうして」

「あの晩、俺、果菜に一目ぼれしてアツシに聞いた」

は?

「嘘ですよね」

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