35階から落ちてきた恋
またプリズンホテル スイートルーム
「どうしてそのまますぐに入院しないんですか」
「ですから、ライブ後には出待ちしてるファンが沢山いて、タカトを病院に運ぶとマスコミにバレて騒ぎになるんですよ」
「具合が悪いんだから仕方ないじゃないですか。入院してしっかり治療すべきです」
「病院にファンが来たり向こうにも迷惑がかかるし」
「だからって、こんな検査機器もないホテルに連れてくるのは問題です」
私が木田川さんと言い争っていると、進藤さんが目を覚まして「いや、ここに腕のいい医者も看護師もいる。問題ない」と言った。
「進藤さん。目が覚めました?大丈夫ですか?」とひと声かけてから「問題は大有りですよ」と告げた。
「本当は昨日の時点で入院です。それを無理して・・・」
「入院しなくても今日のライブのステージに立てたんだし、いいじゃないか」
「よくないです。今からすぐに行きましょう」
「いやだ、もう眠い。疲れた。寝かせてくれ。今から病院に行ったら検査やら診察やらされてしばらく眠れない。おまけに木下先生が主治医じゃないんだろ?」
「僕の病院には入院設備はありませんから、大学病院を紹介します」
「ほらな、俺はもう今日は休みたい。病院は明日行くから寝かせてくれ。それとも、大学病院でも果菜が全部世話してくれるのか?」
「そんなはずないじゃあないですか」
「だろ?交渉は決裂。病院は明日。以上」