35階から落ちてきた恋
「確かに、初対面じゃなかったんです。そこは認めます。でも、その時も見かけたってだけだし、話をしたのは初めてですよ。
あ、先生、出会ったのはアツシさんのお店です。進藤さんってアツシさんのお友達みたいですよ」

「え?それだけですか?」
「アツシの?」

二人は驚いたように声を出した。

「はい、親しそうにしてましたから聞いてみて下さい。それに私の名前もアツシさんから聞いたみたいですし」

「へえ。どこでつながるかわからないものだな」

「そうですね。私もまさかこうなるとは思ってなかったですもん」

木田川さんは黙って頷いていた。

そんな話をしていると事務所スタッフが私の着替えにと大きな紙袋を届けてくれた。

「お金は後でもいいですか?」と聞くと事務所で常備しているものだからお金はいらないと言われているといって帰ってしまった。

「木田川さん、これ本当にもらっていいんですか?」

「気にしなくていいと思いますよ。事務所には所属しているタレントやミュージシャンのために衣装が準備されていて、それらのほとんどはブランドやショップからの無料提供品ですから」

「では、ありがたくお借りします」ぺこりと頭を下げると

「だから、返却も不要ですからね」と木田川さんは笑った。
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