35階から落ちてきた恋

「そろそろ俺たちも帰るか」
「そうだな」
そう言って二人は立ち上がる。

え?
「木田川さんは帰りませんよね?」

「え?帰りますよ?」

「ええ?」

もちろん帰りますよと言う木田川さん。
ちょっと待って。残るのは私だけってこと?

驚く私に
「私がいても仕方ないですし、私ももう妻が待っている自宅に帰りたいですよ。明日の朝に迎えに来ますからそれまでタカトをよろしくお願いしますね」
とさらっと言った。

そうか、奥様がいるんだ。それじゃあ帰りたいよね。
渋々頷くと木田川さんはくすくすと笑った。

「そうだ、水沢さん。私が今朝言ったこと覚えてます?」

「今朝?あれ?何でしたっけ?・・・無事にライブができるようにしてくださいとか?」

「いえ、LARGOは恋愛禁止じゃないって話です」

は?

「貴斗はライブを頑張りましたね。では、おやすみなさい。貴斗をよろしくお願いします」

は?

首をかしげる私を残して二人はスイートルームから出て行ってしまった。

もちろん、明日の朝まではお世話をしますけど。そういう話じゃない。
木田川さんは進藤さんの冗談にすっかり勘違いしているようだ。
それとも、ライブを見て私がすっかり進藤さんの虜になってしまったことに気が付いてしまったのか。


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