35階から落ちてきた恋
「まあ、いいじゃないか。果菜だって疲れたんだし。今朝は誰も見てないよ。まだ早いし、もう少しこうしてろ」
私をしっかりと抱え込もうとする進藤さんに慌てる。
「きゃー、ムリです。無理、むりー。こんなの進藤さんのファンの皆さんに知られたら私、殺されちゃう」
「何言ってんだよ、果菜。お前が言わなきゃ誰にもわからないし、そんなこと言ってたら俺は結婚どころか恋愛だってできないじゃないか」
「いえいえ、大丈夫ですよ。ヒロトさんでしたっけ、結婚されたんですよね。進藤さんも大丈夫ですって」
ジタバタともがいて進藤さんの腕から出ようとする。
ああ、これ昨日の朝もやったわ。でも、昨日の朝より元気になってるせいかなかなか出られない。
「果菜、お前、ヒロトが結婚できたから俺も大丈夫だって思うんだな?」
「思いますよ~。大丈夫ですからここから出してぇ」
「そうか、なおさらいい。お前、おとなしく抱かれてろ」
「だから、ファンの皆さんに殺されちゃいますってばー」
やだやだ、まだ死にたくなーい。
「だから、俺だって恋愛も結婚も許されるんだろ?」
「大丈夫ですよぉ。だから放してくださいー」
「果菜の言ってることはかなり矛盾してるぞ。お前の中で相手が架空の誰かはOKで自分はNGなんだな」
「当ったり前じゃないですかぁ」