35階から落ちてきた恋
私の目？

「真っ直ぐな潔い目をしていた」

「お前のその目が俺の心を刺激する。お前を見てたまらなく曲が書きたくなった。それでライブ前だっていうのに無理してしまったんだ。体調管理ができないミュージシャンなんて最低だがな」

そんな風に感じていてくれたなんて。私にしてみたら驚きでしかない。

「だから、この再会はきっと偶然じゃなくて必然だ」

必然・・・。

「このままナースと患者で離れるわけにはいかない」

そう言って私を抱えなおすように腕の中に閉じ込めて進藤さんは目を閉じてしまった。

ちょっと待って、落ち着こう私。
今、何を言われたんだ？
私がいいとか、再会が必然とか。
心臓の鼓動が爆発しそうに早くなる。このままじゃ進藤さんに気付かれちゃう。

でも、私は胸がドキドキして落ち着かないのにこの人はどうしてこんなに平然としているのだろう。
やっぱり芸能人だし、女性慣れしてるんだろうな。
黙って目を閉じている進藤さんの様子をそっと窺う。

ん？
・・・寝てる？
まさか。

私を抱きしめながらすーすーと規則正しい呼吸音。
彼は完全に眠っている。

こんなに胸がドキドキして過呼吸を起こしそうなほど、緊張した自分が馬鹿らしくなる。
もう！何なのよ、この人は。

からかわれたことにやっと気が付いた。
私の胸のときめきを返せ、ばか野郎。

眠りが深くなった頃を見計らって進藤さんの腕から抜けだして洗面所に向かいさっさと身支度を整えた。


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