35階から落ちてきた恋
「・・・進藤さん、一体どうしたんですか?」
「どうしたって、仕事が一段落したから果菜に会いたくなったけど、お前がアツシの店にも顔出さないから会いに来たんじゃないか」

「あ、会いたくなったって」
「木田川さん経由とかアツシ経由でお前の連絡先調べるのも面倒だから、直接来た」
けろっとして言う。
私は心臓がバクバクとして壊れそうになってるっていうのに。

「と、とにかくあと15分くらいで出られます。め、目立たないようにしててもらえませんか」
おろおろする私を見て進藤さんは吹き出す。

「果菜、お前動揺しすぎじゃねえの?」
「動揺しますよ。いきなり来られたら誰だって」
「迷惑だった?」
「・・・いえ、その、迷惑とかじゃ・・・ないんですけど・・・」
声はどんどんしりすぼみになり進藤さんは笑った。あの魅力的な笑顔で。

くらくらしていたら「今日は車で来ているから終わったら駐車場に来い」と言って私の頭をポンっとして進藤さんは出て行った。

あのライブの日の朝、ホテルの部屋を出るときに私の頭をポンとして「行くぞ」と言って先に出て行った。
あの時の感触と一緒だった。



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