35階から落ちてきた恋
でも、藤川先生は女性との距離をしっかりと取っていた。
二次会のカラオケでも、上手に席を交代したりしてずっと同じ人の隣には座らないし、プライベートな話もあまりしない。
柔らかい雰囲気は壊さず、でもしっかりと線は引いているという感じ。

化粧室の鏡の前では知世ちゃんと事務の鈴木さんが嘆いていた。

「アレは厳しいですね」
「うん、ガードが固すぎる」
「やっぱりハイスペックなイケメンは誘いも多いから普段からこういうことに慣れてるんでしょうね」
「女の子を酔わせてお持ち帰りとか絶対しなさそうだし、逆に藤川先生をお持ち帰りしたいんだけど、できそうにもないね」
「いえてる」

うん、そんな感じ。
ガード、固すぎます。


「藤川先生の彼女ってどんな人なんでしょうね」
「いいな、藤川先生が彼氏なんて。先生ってすっごく甘やかしてくれそう。どれだけでも、頼っていいぞなんて言ってくれたりして」
「あー、それいい、いい!」
「きっとゆるふわな可愛い彼女なんでしょうね~」

二人の妄想は終わらない。
ゆるゆるふわふわとして可愛い彼女が藤川先生の隣にいる。

私もそんな感じを想像していた。
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