35階から落ちてきた恋
全く、この人は・・・と思うけれど、この女性に文句が言える人はこのクリニックにはいない。
今朝、あんなに私に詰め寄っていたクリニックのスタッフたちも私が検査室から連れ出されるのを黙って見送るしかなかったのだから。
それはもちろん、木下先生も同様で。
「水沢さん、ごめんね。ついうっかり美知子に昨日のこと言っちゃって」
ついうっかりじゃないでしょ。こうなることはわかっていたはずですよねと木下先生をにらむ。
「ごめんね、昼ご飯は僕のおごりだから美味しいものを食べておいでよ」と笑顔で送り出された。
今日の私に食欲なんてあるはずがないでしょうが。
予約されていた座敷で向かい合う。
鈴庵の天ぷらは絶品である。
でも、何故だろう、今日は何も味がしないような気がする。
「果菜」
あ、そうだ味がしないのは目の前にキラキラと目を輝かせた院長夫人がいるからだ。
「果菜!」
せっかくのキスの天ぷらも大好きなナスの天ぷらも味がしないなんて何てことだ。
よし、この責任を美智子さんの旦那様である木下先生に取ってもらって、明日のお昼ご飯はここの天丼を木下先生のおごりで出前してもらおう。
「果菜!いい加減に私を無視するのはやめなさい!あんた、午後は有給休暇にして話すまでここに監禁してやろうかっ!」
ひいっ
「ごめんなさい。すみません、すみません。現実に戻りますから勘弁してください」
この人はやるといったらやる人だ。
私はテーブルに額をぶつけてしまうほど頭を下げた。
今朝、あんなに私に詰め寄っていたクリニックのスタッフたちも私が検査室から連れ出されるのを黙って見送るしかなかったのだから。
それはもちろん、木下先生も同様で。
「水沢さん、ごめんね。ついうっかり美知子に昨日のこと言っちゃって」
ついうっかりじゃないでしょ。こうなることはわかっていたはずですよねと木下先生をにらむ。
「ごめんね、昼ご飯は僕のおごりだから美味しいものを食べておいでよ」と笑顔で送り出された。
今日の私に食欲なんてあるはずがないでしょうが。
予約されていた座敷で向かい合う。
鈴庵の天ぷらは絶品である。
でも、何故だろう、今日は何も味がしないような気がする。
「果菜」
あ、そうだ味がしないのは目の前にキラキラと目を輝かせた院長夫人がいるからだ。
「果菜!」
せっかくのキスの天ぷらも大好きなナスの天ぷらも味がしないなんて何てことだ。
よし、この責任を美智子さんの旦那様である木下先生に取ってもらって、明日のお昼ご飯はここの天丼を木下先生のおごりで出前してもらおう。
「果菜!いい加減に私を無視するのはやめなさい!あんた、午後は有給休暇にして話すまでここに監禁してやろうかっ!」
ひいっ
「ごめんなさい。すみません、すみません。現実に戻りますから勘弁してください」
この人はやるといったらやる人だ。
私はテーブルに額をぶつけてしまうほど頭を下げた。