35階から落ちてきた恋


しかし、現実は違う。


それからきっかり二か月後、私は偶然にも街なかで藤川先生が女性と一緒にいるところに出会ってしまったのだ。

友人の結婚祝いを買いにインテリアのセレクトショップに行ったところ、二人はその店内にいた。

一瞬にしてわかった。
藤川先生には本当に彼女がいた。
あれは姉妹とか知り合いでも友達でもない。紛れもなく彼女だと。

それだけ藤川先生の纏う雰囲気が違ったのだ。

そこにいたのは、いつも柔らかく優しいけど、どこかきりっとしている藤川先生などではなかった。

一緒にいる彼女を見る目は甘く口元はずっと口角が上がり、店内を自由に散策するように歩き回る彼女を逃さないように捕まえようとたびたび彼女の肩を抱き寄せている。
彼女の耳元に口を寄せて話しかける姿はいつもの藤川先生からは想像ができないほど甘い空気を出している。
例えるならチョコフォンデュみたい。

甘い、甘すぎないか?
彼女を見つめるそのまなざし。
彼女を抱き寄せるその仕草。

お相手の彼女はというと、こちらも予想と少し違っていた。

まあこっちが勝手にゆるふわを想像していたんだけど。

彼女は私より少し年上って感じ。
黒いさらさらとした長い髪が印象的なすっきりとした可愛いいというよりかなりきれいな人だった。
ゆるふわじゃなく、むしろ反対。そして嫌味じゃなくて爽やかな色気がある大人の女性。
藤川先生に愛されてる自信から生まれる色気なのか?

どちらかというと彼女よりも藤川先生の方が好きというベクトルが大きいのか、独占欲が強いのかと思う。
身体を寄せたり触れたりしているのは藤川先生の方だったから。

おいおい、やりすぎじゃないの?彼女のことが好きという感情がダダ漏れ。

いつも見ている藤川先生とは全く違う姿に、何というか・・・ショックを受けた。
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