35階から落ちてきた恋
「新曲?新曲聞いたの、果菜!」

「・・・はい」

「えー、いいなあ。羨ましい!どんな曲だったのよ」
「美知子さん、LARGOのファンだったんですね。・・・何だかホントにすみません。ええっと、聞かせてもらったのはメッセージ性が強い感じの、頑張ってる人の応援ソングみたいな。うーん、違うな。頑張ってる人を支える周りの人も頑張ってるんだよみたいな?」

「ん?応援ソング?」
「はい。エールを送るっていうか」

「ねぇ、ねぇ」
美知子さんは座り直して身を乗り出してきた。

「はい」
「タカトはさ、昨日果菜を口説いてきたんじゃないの?あの時の君に一目ぼれした~とかなんとか言われなかったの??それに、普通そこはそういう曲じゃなくて、バラードとかもっとこう胸きゅんするような曲で堕としちゃうとか・・・じゃないのかな?」

「だから、ホントに口説かれたわけじゃないんですよ。お前も仕事頑張れよーみたいなノリだったし。ただ、ライブの時のお礼がしたかったとか私みたいな別世界の人間がもの珍しいとかそんなじゃないですか?」

「えー、そんなのツマラナイ」
美知子さんは不満げに口を尖らせた。

「美知子さんのご期待に添えず申し訳ありませんが、そんな感じです」

イヤだ、何それ、全然つまんないじゃんとあからさまにがっかりとした顔をした。

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