はちみつ・lover
朝早くに部屋を出て、両親の実家がある静

岡行きのバスに乗る。窓から景色を眺めて

いると、嫌な現実から目を背けている自分

が惨めになった。


「・・・た、ただいま。お母さん」


あれから4時間くらいして実家に着き、イン

ターホンを鳴らすと母親が出て来た。私が

黙って来たせいかビックリした顔のまま硬

直している。我に返ると嬉しそうに抱きつ

いてきた。

「どうしたの葵。久しぶりじゃない」

「うん、ちょっとね。いろいろあって」

「連絡くらいよこしなさいよ」

母は目に涙を浮かべている。私も久々の再

会に高揚していた。

「早く中入んなさいよ」

「うん」

ありがたく中に入らせてもらうと、リビング

にお父さんがいた。お父さんも驚きの顔で

こちらを見ている。

「なーんだおまっ・・・いきなり来る

か!?」

お父さんは興奮して変なテンションになっ

ている。そんなお父さんを見て、お母さん

はケラケラと笑っていた。
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