はちみつ・lover
「可愛い寝顔だから襲おうかと思っちゃい

ましたけどね」

「断固拒否するわ」

彼はテーブルクロスを広げ私の前に敷くと

料理が盛られた皿と箸をクロスの上に慣れ

た手つきで置いてくれた。

「オムライス?」

「そ。前に好きだって言ってたから」

お皿の上に乗っていたのは形が整ったオムラ

イス。彼が熱心に作っていたのはこれだっ

たらしい。

「ん・・・美味しい。凄いね。男の人が作

ったとは思えないよ」

私は本心でそう褒めた。彼は余程嬉しかっ

たのか照れ臭そうに頬をポリポリと掻い

ている。

「葵さんの笑ってる顔好きなんです。だか

ら、何か一つでも葵さんを喜ばせたくて」


そんなの・・・住ませてもらえるだけで充分

幸せだよ。


心からそう思う。私が救われたのは彼がいて

くれたから。絶望に立たされていた私を、

優しく光に導いてくれたのが彼。だから彼

には心底感謝している。
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