はちみつ・lover
うーわ、何だこの甘々なセリフは。本気で

口説き落とそうとしてるの?


彼の甘い毒牙に掛かってしまいそうで変な

気分になる。逆らいたいのに、熱のこもっ

た目で見つめられると逆らえなかった。


「・・・分かった、行くよ」


正直スーツスタイルのままなのが気に入ら

ないが、アパートが全焼したのでそんな事

言っていられない。服までも全て燃え尽き

てしまったから私にはどうする事も出来な

かった。


「お待たせしました」


食事を終えて、彼は部屋で私服に着替えると

リビングに戻ってきた。トップスはカッ

ターシャツの上からセーターを着て腕まく

り、ボトムスはチェックのゆったりしたパ

ンツという学生みたいな格好だ。24歳なの

にそんなファッションまでも似合ってしま

う彼に思わずときめいてしまう。

「じゃあ、行きましょうか」

そう言って彼は手を差し出してくる。繋ごう

か悩んだが結局やめた。
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