はちみつ・lover
彼がイケメンなおかげか、受け付けの女性

が終始笑顔で対応してくれた。私には大し

て愛想良くなかったけど。やっぱりイケメ

ンと同姓への対応差はどうやっても生まれる

らしい。

「どうしました?葵さん」

市役所から出ると、彼が私の様子を窺ってく

る。優しいその眼差しに気を許してしまい

そうだ。

「な、何でもない」

私も、いくらプラトニックを装ったところ

で彼を好きな事に変わりはないみたい。あ

の時夢中になってキスを交わしたのも、理性

の欠片を失ってしまったからなんだと思う。

「とりあえず、帰ろうよ。明日は私仕事だ

し」

「そうですね」

私はなるべく彼の事を意識しないようにし

た。そうでなければ、また彼を求めてしま

う。間違っても自ら求めに行くような事は絶

対にしない。尻軽だとは思われたくない。


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